ブックメーカーのアービトラージという手法をご存知でしょうか?
いま当ページをご覧になっている方々の答えはおそらく、「まったく知らないし聞いたこともない」「知っているけれど、実践したことがない」「実践経験があって、どんなことが書かれているのか気になった」など、さまざまかと思います。
あと、これらの答えに加えて「人からオススメされた」「情報商材をみかけた」「投資話を持ちかけられた」といった方もなかにはいらっしゃるかもしれません。
このページでは、そんな方々へむけてブックメーカーを用いたアービトラージについて非常に詳しく解説しています。
その目的は2つ。1つは、投資話、投資まがいの詐欺案件としてアービトラージを推奨するものに手を出さないための注意喚起として。もう1つは、システムを理解したうえで自分で活用し、うまく収益を増やすため。
アービトラージの手法は強烈な二面性があります。その全容を知る参考にお役立てください。
ブックメーカーのアービトラージとは何か?
ではまず、ブックメーカーのアービトラージとは何なのかをご説明していきます。ご存知の方は飛ばしていただいて構いません。
アービトラージとは
アービトラージ(Arbitrage)とは、日本語では裁定取引(さいていとりひき)と呼ばれる、金融や物品の売買などで用いられるごく一般的な手法です。
例えば、同じモノがある場所では安く売っていて別の場所で高値で買われているなら、安いところで買って高いところで売れば、差益が出ますよね。また、金利が安いところでお金を借りて高い金利で貸し出せるなら、金利差で儲かります。
例えば、ビットコインが取引所Aでは1BTC98万円で買えて、別の取引所Bでは100万円で売れるなら、「取引所Aで1BTCを98万円で買う / 取引所Bで1BTCを100万円で売る」という行為を同じタイミングで行うと、その瞬間に実質2万円儲かります。
このような、同じものが別々の場所で違う価格で取引されている際に、相反する取引や売買を同時に行うことで利ざやを得る手法のことを裁定取引と言います。(俗に鞘取りとも呼ばれます)
ブックメーカーのアービトラージの仕組み(+オッズの基本)
この理屈をブックメーカーサイト上のスポーツのオッズに当てはめたものが、ブックメーカーアービトラージです。スポーツアービトラージ(Sports Arbitrage)やシュアベット(Sure Bet)とも言います。
まず前提を再確認しましょう。
ブックメーカーはスポーツイベントにオッズを出す業者であって、イベントそのものを主催しているわけではありません。完全な第三者の立場から、それぞれが独自に見積もったオッズを提供し、賭けを募っています。
例えば、日本プロ野球の「巨人vs阪神」という試合が翌日あるとして、
Pinnacle社は「1.40 / 2.90」
Sportsbet.io社は「1.35 / 3.30」
ブックメーカー2社でオッズがこう出ていたとします。
前述の裁定取引の原理に当てはめたら「同じもの(同じ試合への賭け)が、別の場所(別々のブックメーカーサイト)で価格(オッズ)が違う」ということですね。
このような、サイトごとのオッズ差自体は何もおかしな話ではありません。何倍を提示するかは彼らの自由ですから。
ほぼ同じ様な数値になっているのは、過去のデータや大衆心理に基づいた予測がベースになっているため。また、ブックメーカーによっては他社オッズを参照しているケースもあります。
そして、各ブックメーカーは自社に利益が出るように倍率をうまく調整していて、「両方のオッズにバランスよく賭け金が揃う」と結果に関わらず儲かります。
この例では、Pinnacleの1.4倍と2.9倍のオッズの総払戻率は94.419%(当サイト上の計算機で算出できます)で、仮にこの巨人vs阪神戦にトータル1億円の賭け金が集まれば、Pinnacleの収益は約5.6%(560万円)となります。
具体的に計算しましょう。
実際にバランスよく票が分散して、1.4倍に67.4%の票が集まった(1億円のうち67.4%、6740万円賭けられた)とし、2.9倍には32.6%(3260万円)賭けられたとします。
もし巨人が勝てば、1.4倍 x 6740万円 = 9436万円をプレイヤー全体に払い戻すことになります。しかし、集まった総賭け金は1億円ですから、巨人勝利だと564万円がPinnacleに残ります。
反対に阪神が勝った場合は、2.9倍 x 3260万円 = 9454万円の払戻しとなって、1億円から引くと546万円がPinnacleの儲けになります。
(同じ要領で、Sportsbet.ioの1.35倍と3.30倍の払戻率は95.8%。約4.2%が彼らに残るよう調整されている)
基本的に、単一のブックメーカーサイト内の相反するオッズ同士は、この例のように必ず払戻率が100%以下になっている=プレイヤー全体が損する状態になっています。
あなたがもし、Pinnacleで巨人に67400円、阪神に32600円賭けると(計10万円)、どちらが勝っても試合後には約5.6%分回収されて戻ってきます。
絶対に目減りすると分かっているこんな愚かな賭けはしないですよね(笑)
ところが…
複数のブックメーカー間でオッズの差が極端になると、ある面白い現象が起こります。
なんらかの理由によってオッズが動き、
Pinnacle社は「1.5 / 2.8」
Sportsbet.io社は「1.3 / 3.5」
になったとしましょう。
この時にPinnacleの「巨人勝利1.5倍」と「Sportsbet.ioの阪神勝利3.5倍」を組み合わせると、今度はプレイヤー側がノーリスクで儲かることになります。
例えば資金を10万円用意して、Pinnacleで巨人1.5倍に70,000円、Sportsbet.ioにて阪神3.5倍に30,000円賭けるとします。
これで、別々の場所(サイト)で、結果が相反する取引(巨人勝利と阪神勝利の賭け)を同時に行ったことになります。
まさに裁定取引ですね。
私たちプレイヤーはどのブックメーカーでどのオッズに賭けても構いませんから、こんな賭け方をしても全然OK。ルール違反ではありません。
結果はどうなるのかと言うと、
巨人が勝ったら、Pinnacleで賭けた70,000円が的中。1.5倍 x 70,000円 = 払戻10,5000円(実質利益5,000円)
阪神が勝ったら、Sportsbet.ioで賭けた30,000円が的中。3.5倍 x 30,000円 = 払戻10,5000円(実質利益5,000円)
試合結果に関わらず、使った10万円より5,000円増えて戻ってきています。
10万円が10万5千円に、言い換えると払戻率(回収率)が105%の状態です。
複数のサイトをまたいでこのような状態のオッズを見つけだし、賭け金を調整して賭けることで、結果に関わらず利ざやを抜くことができる。ブックメーカーでは「自分が賭けた時点の倍率で払戻しを得られる」ため、賭けを済ませた時点で利益確定。ブックメーカー各社がそれぞれオッズを出し、時に大きな差が生じて払戻率100%オーバー状態が起こるという業界システムの穴を狙い撃つ賭け方。
これが、ブックメーカーのアービトラージです。(当サイト内の『ブックメーカー投資とは?』でも概要をご説明しているのでご覧ください)
ブックメーカーのアービトラージ状態のオッズの実例
本当にそんなことがあるのか?と思われた方もいらっしゃるでしょう。
そこで。1つの実例をお見せします。
こちらは、2019年に日本で開催されて大いに盛り上がったラグビーW杯の準々決勝「日本vs南アフリカ」の勝敗予想オッズです。
ブックメーカー10betでは
日本 3.85倍
ドロー 26倍
南アフリカ 1.25倍
となっていました。
一方、同じタイミングのSportsbet.ioのオッズをチェックすると
日本 7.40倍
ドロー 40倍
南アフリカ 1.14倍
でした。こららを並べると
日本 3.85倍 / ドロー 26倍 / 南ア 1.25倍 | |
日本 7.40倍 / ドロー 40倍 / 南ア 1.14倍 |
両社で、日本の勝利オッズとドローが大きく違います。そこで、この3つのオッズから
日本 3.85倍 / ドロー 26倍 / 南ア 1.25倍 | |
日本 7.40倍 / ドロー 40倍 / 南ア 1.14倍 |
画像内で赤枠で囲ったオッズを組み合わせて計算すると
回収率(払戻率)は104.152%と出ました。
つまり、資金を配分して賭けると試合結果に関わらず賭け金に対し約4%相当が儲かる状態です。
資金を10万円を用意して各オッズへうまく賭けたなら、日本が勝っても南アフリカが勝っても引き分けでも、使った総額より約4000円増えます。
いわば、絶対に負けない利率4%の賭け。(実際の試合結果は3-26で南アが勝ちましたから、この事例では10betでの賭けが的中扱いになる)
このような現象が、複数のブックメーカー間で頻繁に発生しています。サッカー、テニス、野球、バスケ、アメフト、ラグビー、そのほかあらゆるスポーツで。そして、ゴール数のOver2.5/Under2.5や、ハンデ+1/-1など勝敗予想以外のオッズでも。
ということは、アービトラージのオッズだけを拾ってうまく賭けていけば、各サイトの残高は増減を繰り返すものの、総資金は増え続けるのではないか!?と考えませんか?
そうなんです。実際に、増え続けます。
アービトラージのやり方と再現性
ここまでの説明でアービトラージの仕組みはご理解いただけたでしょうか?
ブックメーカーを使ったスポーツの賭けは「スポーツベッティング」と呼ばれるれっきとしたギャンブルです。にも関わらず、アービトラージ状態のオッズに賭けると負けるリスクがゼロになって、賭け金トータルよりも必ずお金が増えて返ってきます。
最高ですよね。まさに夢のような話です。
アービトラージの取り組み方
では、そんなノーリスク必勝法のアービトラージを実践するにはどうすれば良いのかもご説明しましょう。
まず、複数のブックメーカーで会員登録します。最低20サイトは必要です。そして、資金をたっぷり用意し、それぞれのアカウントに入金します。
それから、アービトラージ状態のオッズを発見して知らせてくれるアラートツールを用意します。ネット上に無料・有料のものがいくつかあるので選んでください。
これで準備完了。
あとは、パソコンの前でスタンバイして、ツールがアービトラージを発見するのを待つだけ。
ブックメーカーのオッズは刻々と変化していますから、その動きによってアービトラージも発生します。通知が届いたらブックメーカーのサイトを開き、オッズを探し、賭け金を計算し、賭けを確定させる。アービトラージの発見から完了までを素早く行ってください。
この繰り返しです。
試合が終わるごとに、使用したブックメーカーのいずれかに賭け金総額以上の払戻しが入金されます。
何度か続けていると資金が1つのサイトに偏ってくることがあるため、そうなると一旦ネット口座に回収して不足しているサイトへ再入金します。
そしてまた待機。通知が届いたらBet。待機。Bet。待機。Bet…
アービトラージの真実-無理?可能?稼げる?稼げない?
…と、このように夢の必勝法の実践は地味な作業の連続です。ひたすら待って賭けて、待って賭ける。
この繰り返しで、本当に一切負けずに利益が増え続けるのか?
理論上はイエスであり、2010年以前は、まだ可能性も残されていました。(やり方次第で実際に有効でした)
ところが、今からの実践はまったくオススメできません。(挑戦してほしくないので、上記の説明もあえてボカして適当にまとめています)
オススメできない理由はいくつもあるのですが、最初に根本的・致命的な点を。
ブックメーカーはアービトラージを禁止しています。
厳密には、アービトラージを明確に禁止しているというより、違反行為に該当するから。
ブックメーカー各社には「ユーザーのアカウントを凍結し、好ましくないプレーをする客を排除できる権利」が利用規約に盛り込まれていて、アービトラージだけを狙う行為はその好ましくないプレーに該当します。
「穴を見つけて勝ちにくるなら遊ばないで」ということでしょう。(複数のサイトを用いて結果が相反するオッズに賭けるという行為自体は問題ありませんが、アービトラージに絡むオッズだけの狙い撃ちがNGという意味)
プレイヤー達がアービトラージを発見できるツールがあるように、ブックメーカー各社も同じく、自社のオッズが他社とアービトラージになっているか否かを検知するシステムを保有しています。
さらに、プレイヤー個々の賭けのパターン(どのスポーツにいくらぐらい賭けているのか、勝っているか負けているか、不審な動きはないか等)はすべてリスク管理部門によってモニタリングされているため、アービトラージのみを狙って賭けていれば簡単に捕捉されます。(アービトラージオッズを追いかけていると、明らかに不自然な賭けのパターンになるので)
そして、一度チェックに引っかかるとマックスベット規制(賭け金上限を下げられる)やアカウント凍結・閉鎖などの措置を受けることになります。
ブックメーカーでのプレーはアカウントありきですから、規制や閉鎖が一番痛い。
このルールが、アービトラージの実践を不可能としています。
2010年以前であれば、色々工夫すればまだ規制の目をかいくぐることも可能でした。当時はブックメーカーの各社のサイトクオリティがバラバラ。セキュリティやオッズチェックがゆるい"脇の甘い"サイトは、オッズがアービトラージ状態なのにずっと放置されていたりして、ゆっくり賭けることができました。
ひどい時には、サッカーのライブベットですでに試合中に3ゴール入っているのにOver2.5(3点入ったら的中)がまだ賭けられる状態で、賭けてちゃんと配当が得られたり(笑)
しかし、もちろんそのようなミスオッズの大半は後からキャンセル扱いとなってしまいます。
さらに、オッズのつけ間違い(例えば、勝敗予想でオッズが反対になっている等)によってアービトラージ状態となっていることも多く、アラートの通知を見て「大きな利益率のチャンスだ!」と飛びついても後から「間違いでした」と修正されて、ぬか喜びになることが日常茶飯事。
ブックメーカーの根本的な仕組み自体は昔から何も変わっていないため、いまでもアービトラージのチャンスは日々発生しています。
だから、規制が一切なく自由に拾い放題なら必ず儲かります。
しかし、「理論上はプレイヤーが絶対に勝てる盲点」であるため、実践できない体制になっているというのが実際のところ。
もう1つオススメできない点を加えると、ずっとパソコンの前で待ち続けないといけないため非常に効率が悪い。利益率に対して作業がまったく割に合いません。
ブックメーカーの規制の目をかいくぐりながらチャンスを狙い、成功しても配当が得られない可能性さえある。完全に薄利多難です。
私は一時期真剣に取り組んでいた時期がありますから、ここで述べていることは実体験として身に沁みています。
要するに、これから取り組むのは絶対にやめてください。
アービトラージにまつわる詐欺に注意
そんなアービトラージなんですが、計算上は「無敗の必勝法」であるため、この手法をネタにした投資話・出資案件というものが時々出てきます。
安心・安全を謳って壮大な絵を描いてプロモーションを仕掛けてくるため、上記のような実践面での困難さを知らなければ「本当かな?」と信じてしまうかもしれません。
ですが、ここまでお読みくださったなら、決して楽ではないしほぼ実現不可であることがご理解いただけたかと思います。
よって、今後そのような話に出会ったりセミナーや情報商材をみかけても、盲信しないようご注意ください。
厳密には、アービトラージ自体は詐欺ではありません。シンプルに難しいだけ。
どれだけ体制を整えても、最新の機器で挑んでも、自動ツールだの何だのと工夫してもブックメーカー側の規制を完全にかいくぐることは不可能。(さらに、まったく運用せずに金銭のみを騙し取る詐欺のネタにアービトラージが使用されることもあるようなので、重ねてお気をつけください)
それでもアービトラージの手法を知っておいた方が良い理由
さて、ここまで長文お付き合いいただきありがとうございます。アービトラージの仕組み、再現性、そして注意点などをご説明して当ページの前半は終わりです。
必勝の素晴らしい手法かのように説明し、実現不可能だと期待を裏切ってしまい申し訳ありません。
再現できないノウハウなら知っても意味がないじゃないかと思われたかもしれませんが、ご安心ください。
本題はここからです。
普通にスポーツに賭けているプレイヤーが「アービトラージを理解しておくことのメリット」についてお伝えしていきます。
アービトラージのみを実践してノーリスクで利益を積み上げ続けることはもはや困難でも、原理を知っておくとプレーの幅が格段に広がりますから、現在の取り組みにお役立てください。
クロスマーケットアービトラージ
まず、ブックメーカーのオッズに対して理解を一層深めるという意味で、クロスマーケットアービトラージ(Cross Market Arbitrage)について触れます。
クロスマーケットアービトラージとは、違う種類のオッズで成立するアービトラージです。(賭けの種類のことを"マーケット"と呼ぶため)
簡単な例を1つ。
サッカーのレアル・マドリーvsバルセロナの試合に対して、Pinnacle社の勝敗予想オッズ(3択の1x2オッズ)が「レアル勝利2.7倍 / ドロー 3.3倍 / バルサ勝利2.8倍」だとします。
このときWilliam Hill社のダブルチャンス(DC)の「X2(ドローまたはバルセロナ勝利。Xはドロー、2はアウェイ勝利の意味)」のオッズが1.65倍あると、
Pinnacleの1x2の(1)@2.7倍
William HillのDCの(X2)@1.65倍
で、払戻率102.414%のアービトアージが成り立ちます。
レアルが勝てばPinnacleでの賭けが的中扱い、ドローかバルサ勝利ならWilliam Hillでの賭けが的中扱い。
オッズ2つで、起こりうる3つの結果をすべてカバーできていますよね。
利益率は2.4%です。
このような、クロスマーケットアービトラージの組み合わせが実はブックメーカー内に1万通り以上も存在します。オッズは2種類に限らず、3つ、4つ、5つのパターンもあり。
ただし、どれだけ組み合わせのバリエーションが多くても、3つも4つも複雑な計算をして賭けることは非常に面倒であり非現実的であり、そもそもアービトラージですからそれだけを狙えば規制対象です。
以下はオッズ2つで成り立つクロスマーケットアービトラージの具体的なパターンを並べていますが、とりあえず知識としてご覧ください。
オッズ2個によるクロスマーケットアービトラージの例
種類が異なる、結果が相反するオッズの組み合わせ(一部)
3way 1 と DC X2
DC 1x と 3way 2
DC 12 と 3way X
AH 1(+0.5) と 3way 2
3way 1 と AH 2(+0.5)
AH 1(+1.5) と EH 2(-1)
AH 1(+2.5) と EH 2(-2)
AH 1(+3.5) と EH 2(-3)
3Way 1 と EH 2(+1)
EH 1(+1) と 3Way 2
AH 1(-0.5) と DC X2
AH 1(+1.5) と EH 2(-1)
3Way:3択の勝分敗予想
DC:ダブルチャンス
AH:アジアンハンデ
EH:ヨーロピアンハンデ
これらのオッズは、片方が当たれば片方がはずれ。
マーケットは異なりますが、完全に条件が相反しています。よって、自分が賭けたオッズが一方である場合、もう片方のオッズに賭けると両建て状態が成立します。
上の一覧のうち、「ホームのアジアンハンデ(AH)+0.5と3択のアウェイの勝利(3Way 2)」を例に挙げると、試合結果とオッズの対応は
ホーム勝利 → AH+0.5的中
ドロー → AH+0.5的中
アウェイ勝利 → 2的中
となりますので、どの結果になってもどちらかのオッズが的中します。
時間差によるアービトラージでリスクフリー状態を作る
アービトラージとは何かを、あらためて噛み砕いて言葉にしてみましょう。
- 「結果が相反する(起こりうる結果全部の)オッズに、別々のブックメーカーで賭ける」
- 「倍率差で生じる払戻率100%オーバーの状態」
アービトラージは、この2つの要素が重なることによって成立する手法です。
片方だけでは意味がない。
特にアービトラージの成立に重要なのは後者の方であり、ブックメーカー側が業界全体として対策を講じています。
彼らにとってマズイのは、ある時点において払戻率100%を超えてプレイヤー必勝の状態を作ってしまうこと。
よって、基本的にはアービトラージが起こらないように各社のオッズは調整されていますし、仮にアービトラージ状態になってもすぐに解消されるようになっています。
それは、たとえクロスマーケットであっても同じです。同じタイミングで払戻率100%以下なら、いかに複雑な組み合わせで賭けても私たちはマイナスを被るだけ。
ところが、同じタイミングで結果が相反するオッズ同士がアービトラージ状態にならない(なっていても賭けるべきではない)としても、時間差という要素が加わるといつでもどこでも簡単に成立します。
例えば、巨人vs阪神戦の勝敗オッズで、Aブックメーカーにて先に巨人に賭けたあと、時間をおいてから改めて別のサイトで試合のオッズをチェックしたら阪神の倍率が上昇していて
「先に賭けた巨人勝利オッズ」
「現時点の阪神勝利オッズ」
を組み合わせたら払戻率100%オーバー、なんてことは普通に起こります。
Aブックメーカーで賭けた巨人勝利オッズに対し、釣り合いがとれるようにBブックメーカーで阪神に賭けたらアービトラージ成立です。
負けるリスクを心配せずに試合を楽しめるでしょう。
ただし、このパターンは「巨人が勝つだろう」という予想ありきで先に巨人に賭けています。
さらに、後から阪神のオッズが高くなっているということは巨人勝利の見込みが高まったということなので、あえて阪神に賭ける必要はないかもしれません。
また、わざわざアービトラージを成立させてリスクフリーになったとしても、儲けは非常に小さくなります。
その点、この時間差でアービトラージにしておくという行為は、優勝予想やグループ首位突破予想といったリーグ・大会全体にまつわる賭けを前もって行った場合に特に効果的です。
例えばこちら。
サッカーアジアカップ2019の優勝予想オッズで、大会一ヶ月前の時点でSportsbet.ioの日本の優勝オッズは4.6倍の本命でした。
このオッズに応援の気持ちで3万円を賭けたとします。
日本は期待どおり決勝まで進みました。
そしてカタールとの決勝戦直前、10betの優勝オッズは日本1.5倍、カタール2.5倍でした。
このとき、日本がそのまま勝つと考えるなら開幕前に賭けた優勝予想オッズに対して何も手を加える必要はありません。
しかし、カタールにも可能性がありそうだと考えるなら、日本優勝時に得られる想定利益10.8万円(3万円 x 4.6倍 = 13.8万円の払戻し - 賭金3万円)のなかの一部をカタールの2.5倍に投じることで、ノーリスクの状態を作ることができます。
例えばここでカタール優勝の2.5倍に3万円を賭けたら、
日本が優勝すると…
3万円 x 4.6倍 = 13.8万円の払戻し - 賭金3万円 = 10.8万円利益 - カタールへの賭け金3万円 = 7.8万円が儲かる
カタールが優勝すると…
3万円 x 2.5倍 = 7.5万円の払戻し - 賭金3万円 = 4.5万円利益 - 日本への賭け金3万円 = 1.5万円が儲かる
どちらが優勝しても利益がプラス状態ですね。
つまり、最初に予想して賭けたオッズに対し、状況の変化によって相反する結果+払戻率が100%を超える状態となったオッズに後付けで賭けておくことでアービトラージを作っています。
時間差によって生じた優勝オッズのクロスマーケットアービトラージとも言えます。(結果はカタールが優勝しましたから、この例では損失回避成功)
最初から1.5倍を切るようなガチガチの優勝予想に賭けたなら、順当に決勝まで進んだとしてもリスクヘッジしなくても良いかもしれません。
一方で、5倍や10倍を超えるようなオッズに賭けてその選手・チームが勝ち進んでいる(加えて本命や強力なライバルが残っている)状況なら、この手法を覚えておくと結構役立ちます。
サッカーの大会に限らず、テニスの優勝予想でも使えますし、プロ野球の日本シリーズ優勝オッズ、Jリーグのシーズン優勝でも有効です。
優勝予想以外でも、例えば決勝進出予想オッズに賭けたなら、その選手やチームがベスト4へ進んだ時点で準決勝の相手の勝利オッズに賭けたり、グループ突破予想オッズならグループ最終戦、ベスト8進出予想、降格予想、そのほかなんでも使えます。
- 「結果が相反する(起こりうる結果全部の)オッズに、別々のブックメーカーで賭ける」
- 「倍率差で生じる払戻率100%オーバーの状態」
時間差でこの2つの条件を満たせばどんなオッズも適用可能。
そして、このような時間差でアービトラージ風に賭けることは直接的に規制対象行為ではありません。(ただし、同じサイトでやるのは規約に引っかかる可能性大なのでNG。ヘッジに使うのは必ず別サイトで。また、賭け金が不自然だとチェックされる可能性はあるため、後から賭けるオッズも端数のない自然な額でBetを)
キャッシュアウトが使えない状況・サイト・オッズで効果的
では、そろそろまとめとして実践的な活用法・メリットをご説明します。
上記でご説明した「時間差・タイミング差によって生まれた相反オッズに賭けてリスクフリーの状態を作れる」ようになることが、この知識で得られる1つ目のメリット。
先に賭けたオッズが的中した際の想定利益がある程度大きく、それでいて不的中で終わる可能性もありそうだと考える際に、先に賭けたサイトとは別のサイトで相反オッズを探し、金額を計算して投入してください。
好きなチームや選手に応援賭けして、勝ち進んだ際にそのまま信じて放置するか、危ないと感じる局面でリスクを回避するか。この方法をいつどのように使うかは自分の判断次第ですが、知っておいて損はないと思います。
利点の2つ目は「キャッシュアウト非対応・利用不可の際の代用になる」ということ。
すでにプレー中の方はご存知のとおり、最近は多くのブックメーカーにキャッシュアウト(Cash Out、略称CO)という機能が搭載されています。
キャッシュアウトとは、賭けたあとでもキャンセルできる機能です。
勝敗予想、スコアの予想、ハンデの予想、そのほかなんでも最終的な決着が着く前に"降りる"ことができます。
自分の賭けが見込みどおり当たりそうな際にCOを使えば、想定利益の一部を早めに受け取ることができます。反対に、外れそうなら全額失う前に賭け金の一部を戻すことができます。要するに、早めに利益確定と損切りができる機能です。
COが使えるサイト・対応オッズなら、わざわざ別のサイトで相反するオッズを探して賭けなくても、COで早めに利確して切り上げても構わないでしょう。損切りしたい時も同じく。
ところが、状況によってはたとえCO対応サイトでも、そのオッズでCOを使えないことがあります。(もともと、COはブックメーカー側がサービス的に提供しているオプションであるため、なんらかの事情でCO利用不可だとしてもプレイヤー側は文句を言えない)
そんな時に、このアービトラージの原理を理解しておくとCOの代わりになります。
別サイトを開いて相反オッズに計算して賭ければ利確・損切り完了。
また、もしもあなたがブックメーカーからボーナスやフリーベットを受け取っている場合、そしてそれらを現金化するためにロールオーバー条件をクリアしようと賭けているなら、キャッシュアウトは利用すべきではありません。
まだまったくプレーしたことがなければイメージしにくいかと思いますが、ブックメーカー各社はよくボーナス(架空の資金)のプレゼントを行なっています。
そしてその資金は、一定額を賭けると実際の現金として出金できるようになります。ところが、COを使うと条件クリアのための賭けから除外されてしまうため、獲得ボーナスがあるうちはCOは使わないようにしてください。
利益確定や損切りをしたいなら、COの代わりに別サイトで相反オッズを探して、釣り合うように計算してカバーを。
要は、アービトラージの仕組み(オッズの組み合わせ)を知っておけば、キャッシュアウトが利用不可でもまったく問題なし。複数のブックメーカーを横断していくらでも利益確定・損切りが可能となり、損を小さくしながらうまく儲けを残していけるようになるということです。
ボーナスさえも、トータル資金を減らさないようにうまく立ち回りながら現金化しやすくなります。
ブックメーカーアービトラージに関する全容まとめ
さて、いかがでしたでしょうか?ブックメーカーを使ったスポーツアービトラージとはどのようなものかご理解いただけましたか?
改めて、長文お読みいただきありがとうございました。最後にもう一度ブックメーカーのアービトラージについてポイントまとめます。
ブックメーカーのアービトラージとは?
- アービトラージ(裁定取引)は、金融や売買でも使用される一般的な手法の一つ
- ブックメーカーのアービトラージは、複数のサイト間のオッズ差によって生じるプレイヤー必勝状態(業界システムの穴)を狙う賭け方
- ブックメーカーはアービトラージを禁止している(規制・凍結の対象行為)
- 上記によって、アービトラージのみを実践すべきではない
- ブックメーカーのアービトラージを騙る投資話にも要注意
- アービトラージの仕組みそのものは、知っておくとプレーの幅が広がる
- 時間差で生じるアービトラージは問題ないし、リスクフリー状態を作るのに効果的
- キャッシュアウトが使えない状況でも、アービトラージを理解しておけば別サイトを使って利益確定や損切りができる
- 【注意】相反するオッズは必ず別々のサイトで賭けること。また金額も端数を出さないこと
- うまく活用すればトータルで儲けを増やせる重要な知識
半分はアービトラージの実践に対する警鐘と怪しい話に対する注意喚起でした。まずその点が参考になれば幸いです。
そして、いますでに何かのスポーツに賭けてプレー中の方、これからプレーされる方にも、儲けを増やすためのヒントとしてプラスになれば嬉しく思います。
そのまま実践することはもはや困難ですが、知っておくと普通のプレーにも大いに役立つ。それがアービトラージの強い二面性です。
これから始める方にはやや難解な部分もあったかと思います。オンラインブックメーカーの世界にはアービトラージが生じるような盲点があり、その盲点はオッズが提供される仕組み、多種多様な賭け式があることが原因です。
だから、そのような深いところまで理解してうまく立ち回れば、無知で遊んでいるプレイヤーよりも利益を残せる可能性はグッと高くなります。
当サイト内の他のページでも書いていますが、「複数のサイトを使って利益を出す」という考えがスポーツベッティングでは重要ですから、2~3のサイトでアカウントを用意してプレーしながらオッズの種類をご確認ください。
最後に、記事中に何度か登場したPinnacle(ピナクル)は業界で唯一普通のアービトラージの実践さえ容認しているプロ歓迎ブックメーカーです。
オッズの種類は他社に比べて少ないですが、本気のプレーには必須。他のサイトと併用しつつ、ここでご説明したヒントもたまに思い出して、使えそうなシーンでご活用ください。
あなたの成功を願っています。